箱が鳴り、部屋が鳴り

すでに20年ほどは経過しましたが、スピーカーユニットを収める箱が、天然自然のレベルを遥かに超えて強化された製品の頻出したことがありました。

高低ひとつずつの発音ユニットでまとめた小型の2ウェイをスタンドで中空に浮かせて、まるでそこでシンガーが立って歌唱しているかのような臨場感を演出したシステムが、いずこの専門店でもフロアの中央にセットされていました。

それらのシステムのおおかたがカチンコチンに硬い材料の箱を持ち、ユニットの音だけを鳴らそうと意図されていました。

現在も箱の主流はカチンコチンのようです。前後に揺れる振動板の反作用を、重く冷たい鉛のような構造体でひたすら吸い込み続けるそのアルバイトを思います。

4344をはじめとする、大型のスタジオモニターはユニットの帯域バランスを取るために、床にベタ置きして、さらに背後の壁に密着させるセッティングを前提に設計されています。

劇場用に作られた頃より、スピーカーそれ自体を楽器として設計することは、あまりに自明でした。つまりは箱を鳴らして、部屋と上手い具合に共鳴させることが、使いこなすための最低条件だったわけです。

バイオリンを例えに持ち出すまでもなく、たいていの楽器はそのコンサートレベルの発音ボリュームを、材料と構造による共振制御によって実現しています。優れた音響システムも、エネルギーを熱や雑振動に紛らすことなく、100%音楽へと昇華させるのが至上命題です。

部屋とスピーカーボックスは相似形としてシンクロナイズさせるのがコツです。箱鳴り即、部屋鳴り。

鳴き龍の仕組みを思い出して、部屋のあちこちで手を叩いてみて、響きが増幅しながら澄み渡ってゆくポイントが、スピーカーの設置場所になります。

スピーカーと対峙?それでもいいけれど、部屋という楽器の只中に身を置く楽しみです。

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